「橋渡し」の存在で、会社と社員は繋がっていける

心が折れ、周囲から孤立
休職・退職を選ぶ社員をたくさん見てきた

仕事をするには多かれ少なかれ人との関わりが必要です。自分と同じ価値観の人ばかりなら問題は起きませんが、組織では人それぞれ価値観の違う人同士が共に働くのですから、仕事の量や質・人間関係など、さまざまな要因でストレスを抱えるのも当然なのかもしれません。

頑張りすぎてしまう人。明るく周囲を盛り上げてくれる人。真面目で物静かな人。
どんな人でも「疲れたな。しんどいな」と感じたときには既にストレスが重なっており、何かの拍子にポキっと心が折れてしまうこともあるのです。そして一度でも心が折れてしまえば修復するのはとても大変で、周囲との関わりを避けるために欠勤を繰り返し徐々に孤立、最終的に休職や退職を選択した社員をたくさん見てきました。

仲間の変化・心の不調を感じたときに手を差し伸べるのは難しい判断が必要で、最善を尽くし行動しても相手には届かないことも多い。そんな痛い経験を繰り返すうちに支援者・育成者側も「どうせ声をかけても」と自分を規制し、行動すら諦めてしまうこともあるのではないでしょうか。

私は人事・総務の立場でマネジメントをサポートしていました。マネージャーである仲間はしっかりとした思いを持ち、責任感から先陣を切り行動、積極的に発信しているにもかかわらずその思いは部下に届かない、近づくどころか部下との距離が離れていく。そんな状況が長い間続いていました。

一方私はそばで見ていて漠然と「マネージャーの力になりたい」と思いながらも、自分に自信が持てず、見ない・言わない・動かない。人と深く関わることを避け自分自身とも向き合わない。全てにおいて他人事でした。それは長年抱いていた「自分なんて」という諦めの気持ちから。『自分の可能性を狭めていたのは自分自身、どんな自分でもいいじゃないか』と認められて初めて「自分のためというより仲間のために人を支援したい」と決意することができ、社員との1on1ミーティングの仕組みづくりをスタートさせました。

心の仕組みを知れば
「なぜ伝わらないのか?」がわかる

ところが、当初の私は社員に寄り添うだけの「良い人」。自分と社員を重ね合わせ感情移入し、気持ちが飲み込まれて冷静な目を持てないことも多くありました。社員の視点・価値観に寄り添うあまり、社員が持つ可能性を狭めていたように思います。

さらに組織の状況は、何かを伝えるときには決定事項として命令する、いわゆる「トップダウン」形式。社員の聴く姿勢が整っていない状態で一方的に思いや指示を伝え、不平不満が生まれている状況に変わりはなかった。どれだけ伝えても社員に届かないのは、お互いの心の余裕のなさから信頼関係が構築されていなかったからだと振り返ります。

それらの要因の一つとして、人の特性や考え方など「心の仕組み」を理解していなかったことが大きいと感じます。特に「同じものごとでも上司と社員では見る角度が違うため、捉え方や求めるものが変わるのは当然」と学んだことで選択肢が広がり、適切に手を差し伸べることができるようになりました。

相手に寄り添い、声をかける/相手の可能性を信じる/相手にベクトルを向ける/相手のモノの見方に興味・関心を持つ/など、共感や同調で相手の感情を受け止めつつ、上司の言葉が伝わりやすいように社員の聴く姿勢を整える「橋渡し」をすることで、お互いが理解し合えるようになり、徐々に関係が深まっていきます。

定期的な1on1で「会社の枠」と「社員の枠」をつなぐ。対話・コミュニケーションを通して社員の現在地を把握し、社員へ「大きな枠」を見せ続ける。継続的に社員一人一人と向き合うことで、思い込みやすれ違いによる人間関係の問題、社員のモチベーションが下がり切るのを防ぎ、相互協力関係を作りながらいきいきと働く環境の構築につながっています。

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